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「あ。お庭の草が伸びていますね?私、草むしりします」
彼はどこからか軍手を取り出し、玄関横からちょっとしたスペースの中庭へ入って行く。
「あ、全部はむしらないで!」
彼の背中にそう声をかけるタキ。
「鈴虫の声が聞けなくなるから・・・・」
振り返った男にそう続けた。それに彼は微笑む。
「わかりました。伸び切っている真ん中の方を抜いて、周りは残しておきますね」
それだけ言うと、男は黙々と草むしりを始めた。
夏よりかは暑さも納まってきたが、それでも晴れた日はまだ汗ばむほどの気温はあった。
「ゴミ袋ここに置いておくので、使って下さい」
玄関掃除を終えて、仏壇のある部屋からタキは縁側にゴミ袋を置き、男にそう声をかけた。
「ああ、ありがとうございます」
振り返って男は額の汗を拭くと、軍手の土が顔について汚れた。
「・・・・少し休んだらどうです?」
「いえ、大丈夫です。あ、この辺の花壇はどうします?」
男の指差す方を見ると、数年前までやっていた家庭菜園の残骸があった。
「全部引っこ抜いて構わないです。もう、それの面倒を見るほどの体力もないですから」
「わかりました。また、わからないことがあったらお伺いします」
そう言って男はまた作業を始める。
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