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「だけどよ…!今、ここらで頼れるのはアンタしかいないんだ!医者は、医者と呼べるヤツは、アンタしか…」
「いい加減にしとくれ」
やぶ医者と告げた声が、ピシャリとその声を遮った。
「確かに、病なら頼れるのはアタシしかいないだろう…これが病だったならね」
「…」
「だけど、違うんだよ。これは妖魔の仕業だ。この子は妖魔の毒に蝕まれて、そのせいで今死にかけている。違うかい?」
「それは…」
「分かったなら、もう帰っとくれ。そこの病人も連れてね」
それは、あまりにも残酷な言葉だった。
不意に、稲妻が空を駆け巡り、全てを照らし出す。
そこには、淀んだ目をした老婆と、彼女に向かい合って立ち尽くす憐れな青年の姿があった。
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