序章

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 老婆は無情にも青年__ロイドに背を向け、何処かへと消えていこうとする。去り際に見た彼女は右足を引きずるように歩いていて、彼女もまた、妖魔に侵された身である事を示していた。  その姿を見つめるロイドの横顔は、苦しげに歪められている。 「…おう、どうした。そんな…景気の悪そうな顔してさ」  唐突に耳に届いたかすれ声に、彼は大きく目を見開く。 「…っ、何無理して喋ってんだよ…!体に障るだろうが!」 「だって、よー…いつもバカみたいに陽気なお前が…そんな顔してたら、誰だって心配になるだろ…?」 「バカか!今はてめえの心配しとけよ…アホ!」  叱られた青年はか細い声で笑うと、それから哀しげに目を伏せた。 「ごめんな…迷惑、かけて。俺…もう、ダメかもしんない」 「ダメなんて言うな…!俺は絶対に諦めないぞ!必ず、お前を助けてみせる、どんな手を使ってでも!」 「どんな手でも…か」
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