序章

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 ロイドの言葉に何か思い付いたのか、青年は小さくそう呟いた。 「…チェン?」 「いや…さ。そういえば、聖都には…どんな病でも治してくれる、巫女姫様がいるって話…聞いた事があるな…って、思い出して、さ…」 「…!」  その瞬間、ロイドの目の色が変わった事に気付く事なく、青年__チェンは続ける。 「もし…叶うなら、最期に…会ってみたか…た、な………」 「チェン…?」 「……」  それが限界だったのだろう。再び深い眠りへと落ちてしまった親友の寝顔を、ロイドはじっと見つめ続ける。  それからしばらくして、彼はチェンの体を背に負い、雨の中を歩き出した。 (__巫女姫、か)  ロイドも、うわさには聞いた事がある。どんな病も治し、守護の恩恵を授けるという聖都の守護者の話を。
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