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(…?)
気のせいだろうかと首を傾げ、念のため、辺りに視線を巡らす。しかし、やはり誰も居ないようだ。
「…巫女姫様」
咳払いと共に呼びかけられ、アリアはハッと我に返る。
「何か、気になる事でも?」
「…いいえ。申し訳ありません、お爺様」
今は神聖なる祈りの儀式の最中である事を、彼女はすっかり忘れていた。
壇上に立つアリアの前には、沢山の参拝者がひしめき合っている。皆、年に一度しか観られない彼女の舞いを楽しみに待っているのだ。
今日は、誕生祭。エル神がこの地に舞い降り、人の世を創造したとされる日だ。また、最初の巫女姫が誕生したのもこの日とされている。
ここ、ネルマール神聖教国では、代々、巫女姫の役職を引き継ぐ者はこうして皆に舞いを披露し、皆と共に、神に感謝と祈りを捧げるのが習わしだ。
アリアが巫女姫を継いでから既に五年は経つので、彼女にとっては慣れ親しんだもの。だが、それでもなかなか緊張はほぐれず、無意識のうちに幼馴染みの姿を捜してしまう。
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