序章

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(あ…)  いた。アリアの居る舞台から少し離れたところで、壁にもたれるようにして立つ金髪の少年__サクヤの姿が目に映る。  少しばかり遠く、お互いの顔など識別出来ない距離にもかかわらず、サクヤはアリアが己を見ている事に気付き、手を振ってくれる。  思わず手を振り返そうとして、皆の前にいる事を思い出し、アリアは慌てて手を引っ込めた。  その時、どこからともなく鈴の音が響いてきて、会場が一気に静まり返る。  さあ、祈りの始まりだ。  アリアはゆっくりと息を吸うと、目を閉じた。それから、右手に持つ聖杖を天に掲げる。 (神よ…今日までここに在る人々が生きてこられた事、幸せであれた事、感謝を申し上げます)   聖杖を右手から左手へ。くるりと回転させる。 (つきましては__本日は、極上の舞いを貴方様に…どうぞ、ご覧くださいませ)  その想いを合図に、アリアは大きく聖杖を振りかぶった。彼女が一歩踏み出すごとに、長い黒髪が艶やかに舞い踊る。
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