Day 2

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「そんなに叩くと壊れる」  深いシワが顔中にある白髪の痩せた女性。 「すんません。あ。僕、亡くなった直也さんの友人でして、彼にお金を貸していたのですが・・・・・・」  安住の言葉で彼女の眉間にMのシワが浮かんだ。 「金?・・・・・・帰っとくれ。あんたに払う金などない」  そう言って閉めようとするドアの隙間に身体を捻じ込ませた。 「待って下さい、幸さん。直也には確か、保険金が掛けられていたはずです。死亡した場合には数千万返ってくると・・・・」 「あんた、その話・・・・・・どこで聞いた?」  幸は怪訝な顔を安住に向ける。 「どこって・・・・・・職場や住居周辺を調べればそんなこと簡単に分かりますよ。刑務所暮らしでなかなか職に就けなかった彼に金があったとは思えないし、どんなに懸命に働いたとしても保険に入れる余裕があったとも思えない。受取人は両親とくれば、次に疑われるのは・・・・・・」  幸の方に指を向けてすぐ罵声が飛んだ。 「馬鹿を言うな!あいつは確かに親不孝者だったが、実の息子を殺す親がどこにある!」 「直也は親に金を借りていた・・・・・・でも、もうあなたたちにも貸す金がなく、息子の愚弄さに疲れ果てて保険を掛けて殺した」 「何を馬鹿なことを!あいつはあれから一度も顔を見せたことはない!これ以上親に迷惑かけたくないから自分一人でやっていくと電話があったきり・・・・・・私らは住所さえ知らない・・・・こんなことになるなら、会っておけば・・・・・・」  幸は震えた声で顔を俯かせた。  ブルルルッ  こちらに近づく軽トラが見えた。運転している白髪の男性は恐らく直也の父親の栄治だ。
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