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『こう考えるのはどうよ?犯人が両親の犯行に見せるために直也に保険金を掛けさせて、それから殺した。犯人の目的はあくまで殺害だから金なんてどうでもよかった』
それに安住は鼻を鳴らして笑った。
「だとしたら、相当仲いいヤツの犯行になるだろうな」
『じゃあ、やっぱり由美だろ?本当は直也と連絡を取り合っていて親しかったとか。彼女なら直也も話を聞くだろうし』
呆れた顔で煙草の煙を吐く安住。
「おい、倉本。俺らの仕事は事件解決じゃねーだろ?真相を報道することだろ?」
『何言ってんだよ、今更。警察が発表したことをニュースに流すだけじゃ、遅いんだよ。先回りして新しい情報を獲得しなきゃ、誰もニュースなんか見ちゃくれないぞ?』
「そら、分かってるさ・・・・・・だけど、俺たちはありもしない事柄を事実のように報道しているかもしれないんだ。もう少し情報を発信するのに慎重になった方が・・・・・・」
『それを決めるのはデスクだからね。俺らはとりあえず、情報を掻き集めるだけよ。じゃあ、また電話するわ』
プッ
安住は携帯電話の画面を睨むように見て、煙草を口に押し込んだ。
『殺害された秦野直也さんには多額の保険金が掛けられており、受取人が両親となっていることから警察は近々直也さんの両親からも事情聴取を行うとのことです』
夕方のニュースで新しく流れたのはそれだけだった。
自分が調べた情報が倉本を通して流されていることに違いはない。昔ならそれを誇らしげに感じることができた。
だが最近では信憑性のない安価な情報に不安を覚える。
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