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「へぇ、どうして?」
梛音の目が意外そうに見開く。
その姿にはもう、催淫剤による苦しみは微塵も感じられなかった。
あれが全て演技だとするなら、梛音と言う少年の得体の知れ無さが伺えるというものだ。
敏(さと)過ぎるゆえに、人よりも傷つき、自らの負い目からも逃げれず、自分を痛みつけてしまうこの少年に対して、四ノ宮は自分に何が出来るのかと自問自答してみる。
まずは彼の心の内を知る事だ。
四ノ宮は、自らが持ち得た彼の情報を、最大限に活かせる様に、考えを巡らした。
人差し指で眼鏡をあげ、梛音と視線の高さを合わし、彼はゆったりと息を吐いた。
彼が患者に向き合う際に、必ず行うジンクスである。
一方、梛音の方は、この少し毛色が変わった新米医師をどう扱おうかと、楽しんでいる様に見受けられた。
意を決したように、四ノ宮は口を開いた。
「この際、お互いに腹を割ってお話しましょう。長くなりますが、ソレ我慢出来ますか?」
四ノ宮は梛音のシンボルを指でさした。
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