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「だからと言って~ああ、もう」
梛音にしては珍しく、イライラしたように髪を掻きむしる。その姿を他人に見せる事も厭(いと)わないほどの余裕の無さだ。
そんな梛音の姿を、興味深げに四ノ宮は観察していた。
かつてこの、他人の心理を読むのにたけた梛音を、ここまで追い詰めさせた人物がいただろうか?
「貴方がこんなに焦る姿をわたしに見せたのは初めてです。それほど、憐くんの事を大事に思ってらっしゃると云う事ですね」
驚きと喜びと、そして若干の寂しさを感じながら、四ノ宮は梛音に向かい合う。
子の成長を見守る親と云うのは、こんな感じなのでしょうかね、心の中で四ノ宮は独白した。
四ノ宮に指摘され、梛音自身はっとなる。
「……みっともないな」
自重気味に笑いながら、梛音は頭に手をやりつつ、ため息を吐く。
ふっ、らしくない……。
そんな梛音に、四ノ宮は優しく笑いかけた。
随分、貴方も可愛いらしくなりましたね、そう思ったが、梛音がヘソを曲げそうなので黙っておく。
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