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「いえ、ちっとも。人間臭くて素敵です。憐くんの為なんて格好つけて、いつでも終われる関係を続けるより、ずっといいじゃないですか。さぁ、もう逃げるのは止めにして、ちゃんと捕まえて来なさい」
梛音は痛いとこを突かれて、なんとも言えない表情になる。
心や身体の苦痛から一刻も早く、憐が解放される事を梛音は願っている。
でもそれと同時に、自分の本当の正体を知った憐が、自分から去って行く事を怖れているのも又、梛音自身なのだ。
だから期間限定なのだ、と自らに言い聞かせてきた。
梛音自身は憐の治療をしているつもりだったが、長い間見守るうちに、いつの間にか、自分の方が依存するようになっていたのかもしれない……。
かと言って航の思惑通りに動くのも、なんだか癪な梛音だった。
「くそっ、あんたなんか大っ嫌いだ」
そう毒づきながらも、霧が晴れたようにすっきりした顔で梛音は憐の後を追いかけて行った。
「ようやく、婚約者を卒業させて頂けますかね?」
夢中で駆け出してゆく梛音を見送りながら、そろそろ自分の恋愛に向き合う覚悟を決める四ノ宮だった。
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