☆prologue☆

4/4
前へ
/74ページ
次へ
梛音は一目散に人気のない非常階段へと向かう。アイツの性格から言って、きっと泣き顔を人に見せたくない筈だ。 頼む、追いついてくれ。そう願いながら梛音は階段を駆け足で下ってゆく。 「はぁ、はぁ、はぁ」 息も絶え絶えに一階までたどり着いたが、そこに憐の姿はもう無かった。 畜生、遅かったか……諦めきれずに梛音は憐の携帯番号に掛けてみる。 頼む、出てくれ……。 数回のタイムラグのあと、どこからか電話のコール音が響いてきた。 その音を頼りに梛音が暗い空間に目を凝らすと、小さくうずくまっている憐を見つけた。 「憐っ」 梛音は堪らずに名を呼び、その後安心したように胸を撫で下ろした。 そして憐の傍らに腰を下ろす。 胸の動悸が一向に収まらない。 それは走ったせいなのか、初めて自分をさらけ出す緊張感のせいなのか、梛音にはもう判別不可能だった。 「憐、聞いてくれるかい?僕と四ノ宮の話を……」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加