四ノ宮と梛音の関係性

2/33
前へ
/74ページ
次へ
そこに居るのは、いつもの冷静沈着な医師、奏眞ではなく、子の痛みに惑うただの父親だった。 不器用で、愛を伝えられない奏眞。 誤解から息子に離れて行かれても、言い訳ひとつ言えやしない……。 そんな奏眞を四ノ宮はずっとそばで見てきた。今の奏眞の胸中を想うと、四ノ宮には掛ける言葉など見当たらなかった。 「お預かりします」 四ノ宮は短くそれだけを伝えた。 ふと、四ノ宮の頭に不安がよぎる。 催淫剤か…… 「あの、非常に言いにくいのですが…処置に当たって、ひとつ確認したい事が…」 この状況下で、口にするのは躊躇われた。 二の句が継げない四ノ宮を察し、奏眞が助け船を出す。 「…ああ、催淫剤の処置だな。構わないよすべて任す……君ならばと、お願いしたのだから」 奏眞医師のお許しが出て、四ノ宮はほっと胸を撫で下ろす。 この際、自分の心の痛みなど後まわしだ。 「承諾して頂き有難う御座います。今夜はこちらに泊めさせて頂きますので、申し訳ありませんが、奏眞先生はお帰りを」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加