無重力の砂時計

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「っていうか、雪兎さんもなんで俺が兄ちゃんに惚れてるって知ってんですか?」 「ああ、虎太郎から聞いてるから・・・・」 「違和感、感じたりしないんですか?」 「えっ?なんで?もともと男同志の所から違っているんだから、他になにも言うことないよ」 「兄弟だから・・・・とか?」 「ああ、そうだね。兄弟って・・・・ダメなの?」 すごく天然と言おうか、おおらかと言おうか・・・・どこまで真剣に考えているのやらわからない人だ。 ちょっと意地悪心も湧いて話題を変えてみる。この天然男の表情を変えてやる。 「雪兎さん、会長が浮気しても平気なんですか?」 すると血相をかいたのは雷文虎太郎だった。 「おいおい、なにをお言い出すんだ?」 「いつも聞いてみたかったんです。会長の見境のなさをどう思っているのかなって・・・・」 雪兎は動揺を見せることはなかった。会長の浮気については知っていたのだろう。ただ少し目を伏せて淋しげな微笑みを浮かべる。 「・・・・・・平気、じゃないかな。でも、僕だけじゃ役不足だってことも知っているからね。咎めることはできないよ。今一緒にいるだけで幸せだと思わなきゃって思ってる。もし僕より好きな人ができれば仕方ないし・・・・・」 「ちょ、待て。雪兎より好きな人間ができることはないから!」 慌てふためく会長の姿は初めて見せるものだ。現場では滅多な事で動揺を見せないのに、このひと恋人にはやすやすと本音を見せるんだな。 「もともと僕は喘息持ちで身体が弱いのを知っているから、小さい時から気を遣ってもらってばかりで・・・・今も気を遣わせて申し訳ないと思っているんだよ」 「ゆき、俺は気を遣っているわけじゃないぞ。俺が飛びぬけちゃっているからお前の負担を考えてだな・・・・」 「気を遣っているんだよね」 「うっ・・・・・」 あの雷文虎太郎が言葉を失った。雪兎さんの言葉は心にダイレクトに届くんだ。 「ゆき・・・・・ごめんな」 「ん・・・・こっちも仕事で出ることも多くなったし・・・・僕に飽きたらいつでも言ってくれていいんだよ」 「飽きるわけねぇだろ?お前だけが唯一無二の人間なんだ」 哀しげな顔をしている雪兎をギュッと抱きしめて耳に優しいキスをする。 この前、兄を襲った時の荒々しいものとは全く違っている。 雪兎だけは大事にしているのだ。 兄に対してはただのちょっかいだったのだろう。それが余計腹が立つ。
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