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「でも案外挿れられたら目覚めるかもよ」
「そう云うもんなの?」
「私は断然抱かれる方がいいけどね」
「そんなもんなのかな?」
そんな出会いで2、3人寝たことはあるけどみんな”ネコさん”の誘いしか受けていない。そして二度目はなかった。
誘ってくることはあったけど、二度と同じ相手とは寝ないと決めていたのだ。
「どうして二度目はないの?気に入ってお付き合いすれば前の失恋を忘れられるかもしれないのに・・・・」
「忘れられるような出会いがないってことだよ」
「ふーん。案外一途なのね」
「案外ってのはなんだよ、失礼だな」
「見た目ちゃらいからさ。イタリア男みたいに誰とでも寝そうな雰囲気だし」
「これでも18だよ。そんな雰囲気醸し出せないって」
「結構ヤリチンっぽいよ。真剣な恋をしたいなら、その雰囲気から直しなさいよ」
「チョー失礼!」
「写真だとそれが上手く緩和されていい男に映るんだけどね~。不思議よね」
「写真の俺ってイイ感じ?」
「うん、うっとりしちゃう。下着の奴なんか・・・・ついオカズにしちゃたわよ」
「えっ?ママのオカズになっちゃったの?うわっ!やだなぁ」
「まっ、アンタこそ失礼よ!」
厳つい顔が頬を膨らませてギャルのように怒って見せる。
「ここの太腿のタトゥ・・・・セクシーよね。なんて書いてあるの?」
「好きな人の名前」
「きゃー、ロマンチストね。一生愛し続けるってこと?」
「そう、二度と他の人は愛せない気がする」
「アンタって子は・・・・・」
ママはデカい手で髪をくしゃくしゃっと撫でた。
「オヤジがいたらこんな感じで慰めてくれるのかな」
「オヤジって・・・・・それも失礼ね」
そして二人で顔を見合わせて声を立てて笑った。久しぶりに笑ったかもしれない。
この世に自分一人になったみたいで心が凍りそうだ。
極道なんかになるのは嫌だと思った時期もあったけど、今はみんな懐かしくて愛おしい日々だった。
「ママといると涙が出そう・・・・・俺ってこんなに弱かったかな」
「いいよ、18で家を出て一人で生きてりゃ、ふと淋しくなる時だってあるわ。そんな時はこのカンナさんが慰めてあげるから」
「うん、サンキュ」
くだらない冗談も、たわいない会話も、今はありがたかった。
一人になって改めて自分が恵まれていたと確信する。無条件に守られ、兄に甘えていただけだということも身に浸みた。
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