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「お前も底なしっぽいな。まぁ18歳だっけ?真っ盛りだからな」
「あなたほどじゃないですよ」
「ネコも体験してみるか?案外いいかもしれないぞ」
そう云って尻を掴んでいた手が双丘の間に滑り込んでグッと秘部に指を突き立てられた。
「うぐっ・・・・」
「俺が突っ込んでやろうか」
「最低だな・・・・・」
すると不意に夕焼けに照らされていた室内に明かりが灯った。
「なにしてるんだよ、虎太郎っ!」
「ゆき、なんで・・・・」
「早く切り上げて帰ってきたら・・・・理玖くんに何してるんだよ」
「ちょっとからかってただけだよ」
「まったく・・・・・理玖くん大丈夫?」
「いえ、かなりヤバかったです。襲われそうでした」
「なっ・・・・お前っ!」
雪兎には頭が上がらない様だ。さっきの殺気だったオーラは嘘のように消えて、慌てて取り繕う姿は滑稽とも思えるほど無様だった。
「全然顔が違うんだな・・・・」
雪兎には極道の色をほとんど消して見せている。この人はそんな所も計算して演出しているんだろう。
「まぁ、桂斗は頑固な男だ。お前が突っ込んでいかないとアイツの凝り固まった殻は破れないぞ」
「俺なんかじゃ無理じゃないですか?今も佐竹しか見えてない」
その会話にコートをかけながら雪兎が割り込んできた。
「それは違うよ、理玖くん」
「理玖でいいです」
「あっ、ごめん。もちろん・・・・・佐竹さんは彼にとって最愛の人だった。どんなに愛していたかわかっているつもりだけど、佐竹さんが命に代えて守ってくれた意味は理解してると思うんだ」
「果たしてそうでしょうか。ずっと死にたいって言ってましたし」
「でも今は言わないでしょ?君がいたから言わなくなったんだよ。今の桂斗にとって理玖がどれだけ大切か・・・・・だから組長として頑張っているんじゃないか?」
「・・・・・・そうですかね。兄は人一倍責任感がありますし、組のためとか、舎弟みんなのために気を張ってると思いますよ。俺はただのはけ口なだけです」
「そんな風に思ってんのか?お前・・・・まだ若いな」
「どうせガキですよ」
「まぁ、傍にいて支えてやってくれ。そうしたらお前だってアイツがわかってくるようになる」
「・・・・・・・・・」
「桂斗も早く殻を破って本当の自分を見つめることができればいいんだけど」
雪兎は深い溜息をつく。
兄の抱える『殻』だの『本当の自分』といった雪兎の真意もこのときはわからなかった。
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