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いつもより遅い帰り道 颪が吹き付け私を囲む 夕闇に飲まれ首をすくめ 足早に去ろうとした瞬間 貴方の声に立ち止まる 待っててくれた愛しい人に 安堵を覚え気が緩み 突発のくしゃみに笑う貴方を 口を尖らせ黙って抗議 笑壷に入ったままの貴方が 白いマフラー首から外し 私の首に巻き付けた ぐるぐる巻きにされながら近付く貴方の瞳に戸惑う 視線を逸らすも両の手で固定 回避できない貴方の瞳 触れる唇一瞬の後 どうしていいのか分からずに 困惑したまま視線を逸らす 貴方は見てよと優しい声で 大きく吐いた息の白 寒いはずだといつもの笑顔 私も真似て白い息 ふざけながらに近づいて ゆるりゆるりと濃くなる白さが 今度は長く消えてから 交ざり溢れて漏れていく 寒くない? そんな意地悪言わないで 吐く息の白さと反比例の 私の心と私の体温
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