第9章  月夜の涙

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第9章  月夜の涙

木曜日の午前、エイオースの会議室では 新商品の紙袋デザインのミーティングが開かれていた。 「カラーコンセプトの『曙』を引き立たせるため、 ショッパーの方は、夜空をイメージしてみた」 デザイナーが、持参したデザイン画をテーブルに広げた。 それは、漆黒の地にエイオースのロゴが描かれたシンプルなもの。 しかし、 「これ、角度によっては、ただの黒い袋。 でも、手に提げて揺れていると、 なんとなくこのロゴが星の瞬きみたいに光るんだ」 そして印刷会社への注文として、 いくつかの技法と、使用を希望する素材が伝えられる。 しかも今回は余程に自信があるらしく、 彼は、この一枚しか持ってきていない。 そして、「どうだ?」と尋ねられた立花は即座に首を頷けた。
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