第9章  月夜の涙

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「俺は、もう文句のつけようがないと思う」 そして、自信を持って上司に報告すると請け合った。 だが、デザイナーは、そんな友人を前にやっぱり那々にも聞いてくる。 「君は、どう思う?」 えっ……。 別に、話を聞いていなかったわけではない。 しかし、目の前の男の事も含めて色んな事が頭の中で絡まって、 仕事の事が、少しばかり隅に追いやられていたのは事実。 だが、にわかに言葉を詰まらせた彼女に、デザイナーが微笑んだ。 「『タラシの匂い』を引き立てられてる?」 不覚にも、またしてもドキッと胸が跳ねた。 それどころか、心なしか彼の微笑みが今までよりも優しく温かく見える。 意識し過ぎだって! そんな自分の内側を隠すように、那々は思いっきり頷いていた。
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