第9章  月夜の涙

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「は、はいっ。もう、十分すぎるくらいに」 しかし、 「そう。なら、良かった」 じゃあ、後は頼む。 何事もなかったように那々から視線を外したデザイナーは、 立花に向かって短く言う。 なんとなくホッとするような、ちょっと寂しいような 複雑なものが、那々の胸に浮かんだ。 しかし、もちろんそんな事など知らぬ立花は、 暢気に週末の確認なんかをしている。 「あぁ、そういや、7時でいいんだったな?」 ところが、それにデザイナーがビックリするような事を口にしてきた。 「ああ。謙悟が、えらく張り切ってる。 あっ、君も手ぶらで来てよね。そうだ。なんだったら、彼氏も一緒にどうぞ」 ギクッ、と心臓が思いっきり縮まった。
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