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お腹は空いているが、食べたい物がない。
金曜の夜だというのに、浮き立つ心もない。
それ程までに、彼女には昨夜の衝撃が大きかった。
「那々、俺にチャンスをくれないか?」
約束通り、木曜の夜に会った直之に唐突に言われた。
場所は、夜だというのに、いつもの喫茶店。
そして、間にコーヒーを挟んだ空気までがどこか重く、
その空気同様に、重たい彼の口から出てきた言葉に
那々は、一瞬声が出なかった。
正直、いきなり飛び出してきた言葉は、那々の理解からかけ離れていた。
しかしそれでも彼は、まだ硬い表情のまま、ひどく真剣な声で言う。
「俺、必ず埋め合わせは……、なんていうか、
ちゃんと幸せになれるように頑張るから」
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