第1章

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 認めないのなら見なかったことにしてやろうと、瞳から滲んだ雫を瞼へのキスで誤魔化してやる。 「女の泣き落としって苦手だけど、お前は泣くの嫌いだもんな。意地張って泣いてないって言うのが、本当…」  そこまで言ってから言い過ぎたか?と少し焦るけれど、彼女は怒った様子もなく、泣き落としが苦手の所は聞き流したようだ。  学生時代女の子から告白されて断ると、どうしてもダメ?と泣かれることもしばしばあり、それもあって女に泣かれると本当に対処に困る。  聞き流したのなら良かったと、シェリルがこちらを見つめるので笑顔を返す。 「…本当、何よ?」  俺の言葉の続きを促すので、うやむやにしたくないというシェリルに、言わなくたって分かってるだろうと思いながらも手を伸ばして抱き締めた。 「アルト?」 「本当、可愛いなって」  耳元で囁くように答えると、シェリルが凄く照れているのが何となく伝わってきた。  活性化しているときは、近くにいるVウィルスのキャリアの喜怒哀楽を少し感じることが出来る。  昼頃から調子がおかしくて、もしかして?と思っていたがやはりVウィルスが活性化しているようだ。
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