前編

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俺にとっては衝撃的な出会いだった。 一目惚れといっても過言ではないかも知れない。 しかしどうして彼女が俺を知っていたのか。 管理部の彼女が何故企画室の方からやって来たのか、その時の俺は全く知る由もなかった。 少し経ってから企画室の部下と雑談していたときに何気なく管理部の東を知っているかと尋ねてみたら、意外な答えが返ってきた。 「え、室長知らないんですか?東さんといえば荻窪の彼女ですよ」 退職して約2ヶ月。 久し振りに元勤務先である会社の近くまで来た。 この辺には毎日のように通っていたのに、ものすごく懐かしく感じる。 昔から変わらず続いている茶店の前を通りかかった。 長く勤めていたのに一度も入ったことがなかったな。 いつも店の前を通り、部下たちが楽しそうに談笑しているのを横目で見ていたことを思い出す。 ランチタイムが終わった時間だからか、いま客は少ないようだ。 気まぐれに入ってみようかという気になった。 中に入り店内を眺めてみると、一番奥のテーブルに見知った顔が見える。 ……こっちに帰ってきてたのか。 もう俺には関係ないけどな。 でもちょっとだけ、ちょっかい出してみるか。 まあ、元上司としてアイツに忠告しといてやるのもいいかも知れないな。
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