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チョコレートの入った袋を抱え、息を切らして帰ってきたシュウナは俺と目が合うなり袋を床に落とした。
「遅かったな、おか……」
おかえり と言いかけたときシュウナの頬にツー…と涙が伝った。
俺に向かって歩くシュウナの足はおぼつかずふらふらとしている。
「……どうした…?なにかあったのか…?」
ソファに腰掛けていた俺は立ち上がりシュウナの体を引き寄せると、その体を抱えまたソファに座る。
小刻みに震える身体は俺にしがみついている。
「……シュウ、ナ…も…好き……したい…」
「……?」
「マツリ……ッ、は…女のこに……好、き、してた……」
途切れ途切れに紡がれるシュウナの言葉の意味が理解できたとき、俺は心臓を掴まれるような感覚に陥った。
シュウナが部室を出るとき、俺は「待て、行くな」と声をかけようとした。
だが、最後まで口にせず引き止めることはしなかった。
マツリが部室からいなくなるとき女のところへ行くのだと、俺は分かっていた。場所までは確実に把握できないが教室であることも考えられる。
シュウナを行かせればその現場を見ることも、想定できていたのだ。
嫌な予感はしていた。でも、引き止めることは、
しなかった。
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