夜明け前

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ジリリリッ!!と耳障りな音が私の耳元で鳴った。 「あぁぁ"!!うっさい!!」 スマホの目覚ましが鳴り、意識は一気に覚醒し、寝起きの悪い私は、スマホをベッドから落とす。 それでも、スマホの目覚ましは鳴り止むどころか、余計に大きく鳴り、ようやく私は髪を掻き乱しながら起きた。 半開きの目のまま、手を伸ばし、ベッドに落ちたスマホを拾うと目覚ましを消す。 今日から、また学校が始まるのか……。 行くの面倒くさ……。 私の名前は、藤咲美琴(フジサキ ミコト)。 齢は十九歳。 一昨年までは関東の高校に通っていて、その時は剣道部をしていた。 そして、去年京都の大学受験を合格し、京都で一人暮らしを始めた。 念願の史学科に入り、およそ一年が経った。 四月から二回生となり、今日から通常授業が行われる。 大学の春休みは長く、二ヶ月も休んでからいきなりの授業。 昼夜逆転しつつあった私の身体は、今日から朝から活動する身体へと無理矢理切り替えられた。 「おはよう、美琴ちゃん。朝食できてるから早く食べてね」 「はいはい。……っ!?あー、そっか……」 身体を起こしたけど、再び瞼を閉じて、もう少し寝ておきたい自分と戦っていると台所の方から声が聞こえ、目を開ける。 ワンルームマンション。 一人暮らしだと言ったが、私の家には一人、居候がいる。 二回生になるほんの数日前に私の叔父から預かってほしいと言われ、一緒に住むこととなった。 初対面の印象は、ものすごく好青年な人。 黒髪で整った顔立ちで爽やかな笑顔。 叔父さんマジナイス、と言いたくなるくらいのイケメンだったのだ。 彼の方へ目を向けるとジャージ姿で胡座をかいて、テレビを見ながらパンを食べている。 彼の名前は、吉田栄太郎(ヨシダ エイタロウ)。  
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