夜明け前

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「人を殺した人のことだよ。つまり犯人ってことだね」 「犯人のことか。まあ犯人は、ほぼ捕まるよ」 「へぇ、すごいね」 関心したように笑みを零す栄太郎は、目を細めてテレビへと再び視線を戻す。 パンを食べ終えた私は、時計を確認すると講義までまだ時間があった。 微妙に余った時間をどうしようかと考え始めた時、インターホンが鳴った。 こんな朝っぱらから、なんだろうかと不審に思いながら、インターホンを出ると画面には叔父の隼人(ハヤト)さんが映っている。 『俺だ。あいつの様子を見に来たんだが……』 「すぐに開けます」 このワンルームマンションは、部屋は狭いものの、セキュリティだけはしっかりとしている。 叔父の隼人さんは、雑誌の編集部の部長をしており、この人こそが私の家に『番犬にでもなるだろう』と栄太郎を連れてきた張本人である。 「隼人さんが来るよ」 「えぇ……。僕、あの人苦手なんだよねぇ。恩人ではあるんだけどさぁ」 「確かにちょっと短気っぽいところがあるけど、根は優しい人だと思う」 「性格とかじゃなくて、なんか拒絶してるの」 「はあ……」 嫌だ嫌だと言いながら自称、齢二十七の男が額を押さえて、私のベッドに寝転びだす。 栄太郎が此処に来た時も隼人さんの悪口を言っていた気がする。 とにかく、生理的に受け付けないそうだ。 玄関のベルが鳴り、鍵を開けるとスーツ姿の隼人さんが入ってきた。 「おはようございます」 「おう。おい吉田は……って、何やってんだアイツ」 「隼人さんのことが嫌いなんですって」 「てめぇ……。途方に暮れてたお前を助けてやったのは誰だってんだ!!起きろっ!!」 隼人さんに背を向けて、面会謝絶の態度を示している栄太郎に苦笑いを零す。 栄太郎の肩を乱雑に掴む隼人さんは、眉間に皺を寄せており怖い。 ま、怒られてしょうがないわな。 この人ら、仲が良いんだか悪いんだか分かんねぇもんだ。 「ちょ……触らないでくれる?うざいんだけど」 「俺も男の身体に触れんのは御免だ。つか、オメェに仕事を持ってきてやったってのに、なんだその態度は!!」 「なに?用心棒とか暗殺とかは面倒だからやめてよ」 「いつの時代の話をしてんだ!!」 朝から騒がしい人が来たもんだな。   
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