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口を窄めて、嫌々ながらに身体を起こした栄太郎は、『で、何の仕事?』と言った。
そんな隼人さんは、どこか得意そうな顔を見せる。
隼人さんの職業柄から、雑誌の編集だし、取材の同行とかだと思う。
ちなみに隼人さんは、つい数年前までは関東で働いていたらしいが、最近になって京都に異動となったらしい。
本名は内藤隼人(ナイトウ ハヤト)。
私のお母さんの弟である。
歳は、お母さんと六歳差の確か三十五歳だった気がする。
容姿は良いくせに口調は悪いのが、どうも駄目にしてる人で、俗に言う話さなければ良い男だ。
「俺の知人が京都の警察をやっていてな。今日は、特別公開される御所の警護に行かなくちゃならねぇらしい。そこでお前に同行してほしいって話だ」
「禁裏の警護ぉ?それは、新政府のやることじゃなかったの?」
「文句言ってんじゃねぇぞ!!良い年の男がニートやってんじゃねぇ!!着替えろ!!」
うるせぇ……。
隼人さんに首根っこを掴まれて、強引にベッドから引きずり降ろされた栄太郎は、本当に嫌そうな顔をしている。
その様子を見ていた私は軽く苦笑いを零し、時計へと目を向けるとそろそろ大学へ行かないと遅刻する時間となっていた。
やべぇ、遅刻する!!
「隼人さん、栄太郎をお願いします!!私、授業に遅刻しそうなので!!」
「おう、任せろ。鍵は持ってんだろうな」
「はい!!合鍵置いとくんで、栄太郎に持たせといてください!!」
「気ぃつけろよ」
バタバタと急いで、講義で使う本を鞄に詰め込むと靴を履く。
『いってきます!!』と言うと私は、家を後にした。
家から大学までは、徒歩十五分ほどで着く。
二限からの講義を履修していた私は、早歩きで大学までの道を歩く。
鴨川の土手沿いを歩き、少ししたらすぐに大学が見えた。
「おはよー、美琴」
「おお、おはようございます!!如月先輩」
「美琴、日本近世史講義取ってる?」
「いや今日は、中国の民衆文化と中国仏教史で……」
「うわぁ……絶対寝るわ」
大学の門前でサークルの先輩である如月先輩に会った。
三回生で頭が良いだけでなく、私みたいにガサツではなく女子力の塊を兼ね備えている、まさに男にモテそう女子。
そんな女の子らしい先輩かと思えば、高校生の時には、剣道部であり、全国大会に出て、雑誌まで載ったらしい。
如月先輩は、私の憧れの的だった。
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