夜明け前

6/19
前へ
/500ページ
次へ
如月先輩は、『じゃあ私、こっちだから』と言うと少し早歩きで先に行ってしまった。 ポニーテールをユラユラと揺らしながら走り去る如月先輩。 可愛いなぁ……と思ってから私も足早に講義のある教室に向かった。 教室に着けば、入学当初から気が合う友達が居た。 「琥珀も一緒の講義取ってたんだ」 「おはよー。ほんとは近世の講義取りたかったんだけど、去年取ったし、仕方なく取ったの」 「まあ東洋史とか、あまり興味ないもんな」 「それな」 先に座っていた気の合う子は、桜井琥珀(サクライ コハク)。 私のゼミは古代専攻だけど、琥珀は近世専攻で、好きな歴史の時代が違うものの、性格や好みはどこか似ていた。 私より背が小さく、可愛らしい顔をしているのに口はちょっと隼人さんみたいに悪い。 髪はセミロング茶髪の私よりも短くて黒髪である。 机にとりあえずノートと筆箱を出し、スマホをいじりながら琥珀と他愛もない話をしているとベルが鳴り、講義が始まった。 最初の講義は、講義の雰囲気を知る重要なものである。 駄目だこの講義、うるさい。 大教室で行う講義は、予想通り騒がしい講義で教授の話し声は、真ん中に座っていた私達にかろうじて聞こえるくらいだった。 前列は静か、真ん中は寝るかスマホをいじるかだがノートは取る、後列は喋る。 大学の大教室での講義はそんなもんだった。 そんな講義だと分かった瞬間、決まって私はやる気を無くす。 机に顔を突っ伏すとそのまま目を閉じる。 すると次第に教授の声も騒がしい学生の声も遠のいていき私は、眠ってしまったーー。  
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加