夜明け前

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「ただいまー!!って、栄太郎帰ってないのか」 大学の講義を二限から五限受けて帰ってくると、七時くらいになっていた。 春休みが終わる数日間は、アルバイトをして帰ってくると栄太郎が居たけど、今日は隼人さんの紹介した仕事をやっているため帰ってきてない。 暗くなった部屋の電気を付け、着替えては、なんとなしにテレビを付ける。 たまたまニュースがやっており、ぼんやりと眺めていた。 『今日から御所の一般公開が始まりました。しかし始まって午後十四時頃……刃物を持った男が現れ、警備員一人が軽い怪我をしたとのことです。その後、男は逃亡し……』 「御所に刃物を持った男……。そういえば、栄太郎がそこの警護の手伝いをするとか言ってなかったっけ?」 偶然、目にしたニュースがそんな内容で、今朝隼人さんが言っていた御所の警備の仕事という話を思い出して不安になった。 大丈夫かな、栄太郎。 ま、あいつは、ヘラヘラしてて運良く免れてそうだけどな。 気にすることねぇか。 栄太郎の呑気なところを思い出すとすぐに不安は解消される。 そして、ガチャリと玄関が開く音がすると栄太郎が帰ってきた。 「おかえり栄太郎……って、どうした!?その顔の絆創膏!!」 「ほんと信じらんない。刀持って、斬りかかってきた男なんて斬れば良いのに、僕が止められたんだよ?あんな男、死ねばいいのに」 「ず、ずいぶんイライラしてますねぇ、栄太郎さん」 「当然でしょ。そいつには逃げられるし、怪我させられるし……腹が立つなぁ」 帰ってくるなり、ずいぶんご立腹な栄太郎は、着ていた服を乱雑に脱ぎ捨てる。 露わになった半裸は、あの呑気な姿から想像できないほど引き締まった身体つきをしていた。 意外だ……。 ちゃんと筋トレとかしてるんだな。 「なんか腑に落ちないなぁ。刀さえ持っていたら……刀さえ……」 「で、でも軽い怪我で良かったよ」 「良くない。禁裏で刀傷沙汰なんて、無作法にもほどがあるよ。まあ、僕らの藩も言えたことじゃないけどさ。逆賊扱いになったし」 疲れきった顔をした栄太郎は、ベッドに腰掛けると点けっぱなしのテレビへと目を向ける。 御所一般公開のニュースが流れていた。  
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