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「でもさ、面白半分の千草さんはさておき、馨瑠さんはもう少し警戒心とか危機感を持った方がいいよ」
以前から懸念を抱いていた気持ちを僕は再度告げる。
馨瑠さんはまたか、という表情をすると「はいはい、分かりました」と心の無い返事をした。
「面白半分だなんて酷いなぁ。これでも心配してるんだぞ……よし、分かった!それなら今度奴が現れたら私が取っ捕まえてやろう」
おもむろに立ち上がると、声高に千草さんが宣言した。
「颯太が変な事言うから千草が余計なやる気を出してしまったじゃないか!」
馨瑠さんが僕に抗議する。
僕も千草さんがそんな風に言い出すなんて想像していない。完全にとばっちりだ。
言い出したら聞かない千草さんの事だ、本当にやってしまうだろう。
「千草さん……あまり事を荒立てるのは良くないよ」
説き伏せるように言ったけれど、聞き入れる気配はない。
「大丈夫、大丈夫!私がちゃんと言ってやるさ!男なら当たって砕けろってね!」
ああ駄目だこの人。全然話が通じてない。馨瑠さんも同じ気持ちなのか頭を抱えている。
店に入って来た時はあんなに退屈そうだったのに、今は一人だけ楽しそうだ。
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