58人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当だよ!うちの料理だって食べた事ある筈なのに、フランス料理を冒涜するなんて許せない……そうだ!馨瑠と颯太で今度うちの店に食べにおいでよ。本当に美味しいよ。サービスするからさ」
「僕フランス料理なんて食べた事ないし、マナーも分からないよ。完全に場違いだし、それにそんなお金も持ってないよ」
僕は慌てて提案を拒否する。千草さんのお店の前を通った事があるが、店構えからして高級感が漂っていた。高校生の僕に払えるわけない。
「そんなの馨瑠に払って貰えばいいじゃん。たまには福利厚生の一環で食事会でもしなよ。従業員の労いは雇用主の責務だよ」
「そうだな確かに悪くない提案だ……だが店が軌道に乗ったとはいえ、まだそこまで利益はないし……そうだ!千草が何か買ってくれればいい。その儲けで行くとしようじゃないか」
馨瑠さんはやけに芝居染みた言い方をするとニヤリと笑った。
「……それにしても、馨瑠は随分とフランス家庭料理に詳しいんだな」
お金の話が自分に及んだからか、千草さんは聞こえないふりで話題を変えた。
「詳しいもなにも、住んでたからな」
「えっ?そうなの知らなかった」
「言ってなかったかな。フランスから荷物が届くから気付いてると思ってた」
確かに、時折フランスからの商品が届いていた。でもそれは普通に仕入れてるのだと思っていたし、フランスに関する話を今まで馨瑠さんの口から聞いたことはなかった。というよりも、馨瑠さんが自身の話をする事自体があまりなかった。
最初のコメントを投稿しよう!