プロローグ

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話は過去から現在に移る。 特区設立から25年が経ち、家庭用医療キッドへの批判的な声は確実に減少した。 その矢先に起きた大事件、事の始まりを知ったのはテレビの片隅で流れたニューステロップ(速報)だった。 ーー速報:アメリカ、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアの5ヶ国全土で同時に暴動が発生……重軽傷者、死傷者の数は不明……各国首脳が臨時招集、テロ対策本部が発足されるーー テロップを見た人の大半は「大変だなぁ」と、どこか別世界の出来事として考えていた。テレビから流れる情報は、自分の日常とはかけ離れたもので、殆どが他人事だ。 遠くの世界の出来事が、まさか自分達の日常で起こるなんて、その時は思いもしなかった。もし、その事を知っている存在がいたなら、世界を見下ろす神様か裏で糸引く首謀者に違いない。 その他にもいたならば、余程頭の良い人間か高い地位にいる人間だろう。 どう足掻いても弱者は知る余地もない、起きた事を確認する術もなかった。ただ日常が壊れる様子を眺める事しかできない。 今の世界は正しさを忘れる程に醜く歪み、血に汚れた現実は人間の心をネジ曲げた。その歪みは日に日に大きくなっている。いつか心が限界を越えてネジ切れてしまいそうな程イビツに変えてしまったのだ。
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