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恐る恐る赤い光が差し込むドアを開けた。その先には赤く染まった床に倒れた父がいた。異様な光景を目の当たりにし、全身に鳥肌が立った。
混乱と焦りが入り交じる中、赤い床に一歩踏み入れた途端、足ヌルッと不快いな感触がまとわりついた。
そこでようやく床に広がるのは血だと気付いた。
俺は堪らず腰を抜かし、血溜まりに尻餅をついた。ヌルッとした感触が寝巻きからも這いのぼる。
あまりの非現実に声が出ない、吐き気が押し寄せる。
今は父が生きているかも知れない一縷の望みにかけ、家庭用医療キットを台所へ取りに向かおうとした。
その時、無音の室内に衣服の擦れる音が僅かに鳴った。音は背を向けて見えるソファーから聞こえ、よく見るとお尻が背もたれからはみ出ていた。
「...ユイ、なのか?」
抜けた腰に鞭を打って四つん這いで動く。
やっとの思いでソファーの背もたれに手を掛け、奥を覗いた。
そこには頭を抱え酷く震えた妹がいた。
「ユイ...何があっ……!?」
ソファーの向こうに血に汚れたナイフが落ちていた。
「おい、ユイまさか!?」
結は頭を抱えたまま首を振って、語り始めた。
「お、おと…さんがおとうさん…ユイにナイフ向けたの。声したの…目、合った人…おとうさんと目があたの。ユイね体動いたの。おとうさん…ユイにナイフをね、振り上げるの……。わからないの、ユイナイフ持って……。おとうさん寝てた…の。それからそれか……。」
俺は「黙れ!!」と、取り乱して叫んでいた。
ユイは未だに頭を抱え酷く震えていた。
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