第1章

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その声に興奮して彼女の内腿に手を這わせた時、携帯が鳴った。 それがどちらの着信音なのか分からずに、2人とも自分のスマホを取り出して目をやる。 すると、美里ちゃんのスマホだった。 「……辻本さん……」 画面を眺めて、美里ちゃんは呟いた。 乱れた姿で、他の男の名前を呼ぶなんて。 スマホは美里ちゃんが出るのをためらっているうちに、数回鳴って切れた。 辻本さん、さっきの仕返しかと思うような絶妙なタイミングだよ。 一瞬俺の方に向いていた彼女の目は、また辻本さんに対して未練が残ったような色をした。 「……どうするの?」 完全に白けた俺は、とりあえず美里ちゃんが辻本さんとどうしたいのか知りたかった。 冷え切った俺の目が分かったのか、彼女は怯えたように上目遣いで俺の顔色を見る。 「だって、奥さん居るなら、無理だもの……」 そうだけど。 あの辻本さんが、簡単に引き下がる訳ない。 美里ちゃんが悲劇のヒロインを気取るようになったらおしまいだ。 辻本さんの事を綺麗な思い出としてとっておかないで、嫌な思い出としてズタボロに傷ついて欲しい。 二度と、あいつに付け込まれないように。 そう考えたら、俺の思いはスラッと口から出た。 「いっその事、ボロボロにされちまえばいいんだ。アンタなんて」
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