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その声に興奮して彼女の内腿に手を這わせた時、携帯が鳴った。
それがどちらの着信音なのか分からずに、2人とも自分のスマホを取り出して目をやる。
すると、美里ちゃんのスマホだった。
「……辻本さん……」
画面を眺めて、美里ちゃんは呟いた。
乱れた姿で、他の男の名前を呼ぶなんて。
スマホは美里ちゃんが出るのをためらっているうちに、数回鳴って切れた。
辻本さん、さっきの仕返しかと思うような絶妙なタイミングだよ。
一瞬俺の方に向いていた彼女の目は、また辻本さんに対して未練が残ったような色をした。
「……どうするの?」
完全に白けた俺は、とりあえず美里ちゃんが辻本さんとどうしたいのか知りたかった。
冷え切った俺の目が分かったのか、彼女は怯えたように上目遣いで俺の顔色を見る。
「だって、奥さん居るなら、無理だもの……」
そうだけど。
あの辻本さんが、簡単に引き下がる訳ない。
美里ちゃんが悲劇のヒロインを気取るようになったらおしまいだ。
辻本さんの事を綺麗な思い出としてとっておかないで、嫌な思い出としてズタボロに傷ついて欲しい。
二度と、あいつに付け込まれないように。
そう考えたら、俺の思いはスラッと口から出た。
「いっその事、ボロボロにされちまえばいいんだ。アンタなんて」
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