第1章

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そうきっぱり言われちゃ、それ以上会話も続かずに机の下で組んだ両手に目を落とした。 辻本さん、まだ戻って来ない。どんだけ落ち込んでるんだよ。 こっちだって間がもたねえのに。 どうにもならない間延びした時間の中、美里ちゃんは、ぽつ、と話し出した。 「あれから、子供の頃を思い出したの」 「え?」 「渉くんに、こてんぱんに傷付けられてから」 彼女の目は、まだ怒っているようだ。 でも、逸らさないで俺を見ている。 「……傷が治らなかったら俺が治すから、って、子供の頃に言ったよね?」 「……言ったよ」 「……治してよ、ね」 喧嘩を挑むような彼女の睨みに、思わず笑いがこぼれた。 それはどういう意味か分かってる? どうにも堪え切れない嬉しさに、口元が歪む。 「いいよ?」 なんだその誘い文句は。 下手くそか。 傷を治せと言う美里ちゃんは、傷が治ったらどこに行くのだろう? またフラフラとロクでもねえ男に行っちまうのかな? ああ そうしたらまた俺で ボロボロに傷付いてください。 終
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