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そうきっぱり言われちゃ、それ以上会話も続かずに机の下で組んだ両手に目を落とした。
辻本さん、まだ戻って来ない。どんだけ落ち込んでるんだよ。
こっちだって間がもたねえのに。
どうにもならない間延びした時間の中、美里ちゃんは、ぽつ、と話し出した。
「あれから、子供の頃を思い出したの」
「え?」
「渉くんに、こてんぱんに傷付けられてから」
彼女の目は、まだ怒っているようだ。
でも、逸らさないで俺を見ている。
「……傷が治らなかったら俺が治すから、って、子供の頃に言ったよね?」
「……言ったよ」
「……治してよ、ね」
喧嘩を挑むような彼女の睨みに、思わず笑いがこぼれた。
それはどういう意味か分かってる?
どうにも堪え切れない嬉しさに、口元が歪む。
「いいよ?」
なんだその誘い文句は。
下手くそか。
傷を治せと言う美里ちゃんは、傷が治ったらどこに行くのだろう?
またフラフラとロクでもねえ男に行っちまうのかな?
ああ
そうしたらまた俺で
ボロボロに傷付いてください。
終
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