第1章

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それから、適当な店に入って美里ちゃんと向かい合わせで座った。 「何か飲まれます?」 「小林さんが飲まれるなら、お付き合いしますよ」 コバヤシさん、ね。 何も覚えていない 美里ちゃんの言動に、いちいちイラつく。 俺だってあの夢を見るまでは彼女の事なんか忘れていたのに。 「……小野寺さん、子供の頃、佐倉のコーポKに住んでましたよね?」 「……え? なんで知って……?」 俺の言葉に、美里ちゃんは本当に驚いた顔をした。 そこまで言ってもまだ動揺してる彼女の瞳に、イライラを通り越してがっかりする。 「その時、一緒のアパートに居た男の子、覚えていませんか?」 そこまで言って、やっと彼女の焦点が俺に定まった。 「覚えて、ます。……渉くん、て、男の子が……」 「思い出した? ……美里ちゃん」 美里ちゃんは、口を両手で覆って驚いた。 「……うそ……あの、渉くんなの!?」
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