あの頃吹いていた風が今日もまた吹いている

7/7
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 私は目を覚ました。  服も布団も汗で濡れていた。  私は自分の小指を見てみる。斬れてなかった。  スマホを取り出し、地図を見る。  やっぱり小学校もあの道もある。  その時、家の電話が鳴った。それは病院からだった。  病院へ急いで向かう。  私は声援し、妻が子を産んだ。女の子だ。 「ねぇ、あなた。この子の名前つけたの?」 「京子だよ」  ナースが私の顔を嫌そうに見ながら言う。 「その名前、やめた方がいいですよ。今日、死んだ人が小川京子って言う人ですから……」 「いいんです。私とその人は初恋の人でその人に会ったのはこの近くなんですから。それに約束したんです」 「ふふ。あなたらしいわね。ナースさん、私も彼が決めたその名前彼女に与えたいわ」  嫌な顔をしていた彼女は”初恋”という言葉を聞いてから急に笑顔になっていた。 「縁のあるお姫様が育ってくれることを私は心から祈ります」  そうナースは言った。夕方に見たニュースによると、彼女は事故死だったようである。彼女の告別式が近いうちにあると、あの頃に彼女を忘れさせた男友達から報告が来た。家族そろって出ることにした。  病院の窓を見た。今日もまたあの大きな木を揺らす風が吹いている。  どこからか風に乗って彼女の声が聞こえてきそうだ。  ありがとう、と。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!