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毛布
アリストテレスのため息が深く長く僕を刺した
かび臭い匂いの古い本を閉じ
窓の外を見上げると
白いものがふわふわと舞っている
導かれるように窓を開け
白いものに手を差し出した
手のひらで
しゅわり
しゅわりと
いくつもの白が溶けていく
「雪が降ったのね。早く閉めて、寒いから」
毛布が言った
中には冬でも薄着の彼女
再び手のひらに白いものを乗せてみた
今度は結晶の形を残し
少しの間そこに留まって
またしゅわりと消えていった
これは雪だと彼女が言う
本当に雪なのかと自分に問う
真っ白ねと彼女が言う
本当に白いのだろうか
すっかり夜ねと彼女が言う
外は何故暗いのか
「ねえ、早く戻ってきてよ」
毛布のかたまりがくぐもった声を出す
頭まですっぽり毛布に潜り込んだ彼女は
もはや毛布でしかない
それは本当に彼女と言えるのだろうか
僕は分からなくなってしまった
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