第1章

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「じゃあ何で殺した」 「この能力を持ってしまったからです。人は持っていると使いたくなるものでしょ。それが善でも悪でも」  それからも一向に話は進まず、取調べはまた明日ということになった。  他の警察官に深谷の身を引き渡した。  最後、取調室から出て行く深谷は俊次の方を振り返りこう言ってきた。 「刑事さん、俺の言ってること信じてないでしょ」 「その『でしょ』って言う話かた辞めろ。さっきからムカつくんだよ」 「それはすいません。あなたと話すのは初めてだったんで。覚えておきます」  そう言うと深谷は強く目をつぶった。 「本当に時間、巻き戻そうとしてますよ」  そう言い宮原さんの方を見ると宮原さんも目を強くつぶっていた。  12月23日 午後4時半ごろ  宮原哲也は目の前で一生懸命働く深谷光一をじっと見つめていた。  これで深谷にまんまとやられたのは何回目だろうか。  時間を巻き戻す度に、無差別に違う人間を違う日時に殺す深谷を未然に止めるのは困難だった。 「そんな欲求叶えなくてもいいだろ」  そうつぶやいた声に運転席に座る俊次が「え、なんですか」と言葉を返した。 「いや、独り言だ」  そう返事を返しまた宮原は深谷を見つめた。  深谷、その欲求を叶えてお前は何か幸せになったのか。  こんなクソみたいな能力のせいで、お前の内の大切な何かが壊れていってないか。    持ったら使いたくなる。か。 「俊次よ。人間、持たなくていいもの持ちすぎだと思わないか」 「え、そうですかね。って言うかあの匿名のタレこみ、かなり信憑性うすいですよ」  あれは俺が出したんだよ。  そうでもしないと勝手に張り込みをする事はできない。  ここで張り込むのはもう三回目だ。 「お前、深谷のことちゃんと見とけよ」  そう言って宮原は車を降りて花屋の前まで走った。 「ちょっと宮原さんどこ行くんですか」  俺はこの能力をあんな風には使わんぞ。  花屋の前に到着すると一人の女の子がその前を歩いてきて宮原に「こんにちは」と元気よくあいさつをした。 「こんにちは。気をつけて帰るんだよ」  女の子は「はい」と元気よく返事をして、そのまま道を元気よく歩いて帰っていった。        
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