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「そうか、じゃあ今縄文時代に戻って土器でも持ってきてみろよ。そうしたら信じてやるよ」
「残念ながら時間を巻き戻すのはタイムスリップとは違うんで自分が存在してない時代には戻しようがありません」
「なんだ、それ。随分都合がいいな」
「しょうがない事です」
外は既に真っ暗になり時間だけが無駄に過ぎている。
宮原さんは相変わらず壁際に立ち深谷をじっと見ているだけだ。
俊次がどう打開しようかと考えていると深谷が爽やかな顔をして俊次に話掛け始めた。
「刑事さんは、時間が巻き戻せたら、どうしますか」
「は、何を言ってるんだ」
「ただの質問ですよ。いいから想像してみてください。どういう事にその能力を使いますか」
そう言い身を乗り出す深谷に少し動揺し、答えなくてもいい質問につい俊次は答えてしまった。
「普通は、競馬の結果でも覚えておいて大金を稼ぐんじゃないのか」
「ほら、刑事さんだって使うでしょ。この能力。しかもインチキに」
「べ、別にインチキじゃないだろ。この場合」
「じゃあ僕のも殺人じゃないですよ」
チッ。
つい舌打ちをしてしまった。
それを見て深谷はうれしそうに微笑んでいる。
「仮に、仮にだがその能力が本当だったとしてもなぜ殺人なんだ。お前も競馬で金を稼げばいいじゃないか」
そう言うと深谷はため息を吐いた。
「刑事さん。人によって欲求はそれぞれでしょ。お金が欲しければそうすればいいし他の欲求があれば人間その欲求を叶えようとするでしょ。僕はその欲求が殺人だっただけです。人を殺すってどんな感じかなって思って」
「とんでもない欲求だな」
「だってお金は働けば稼げるでしょ。けど殺人は違う。僕もこの能力を手に入れるまではどんなに人にムカついても、死んでしまえと腹をたてても、人を殺そうとまでは思ったことなんてなかったんですよ」
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