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“ポーン18階です”
機械の声に導かれ、私は他のフロアーと全く雰囲気の違うネイビーの絨毯に足を下ろす。
ここの階に来るのは初めてでは無いが、悔しくも前回訪れたのは最初で…最後かもしれない、あのプロジェクト会議の時だった。
18階以上は大会議室と役員室で占めるため、基本的に一般社員は特別な用が無い限り上がって来ない。
そして、そんなフロアー内に私の新天地“秘書室”もあった。
「それで…?どっち??」
キョロキョロと辺りを見渡すが、なにぶん使いなれていないフロアーの為、既に迷子状態の私。
「とりあえず、歩いてみますか…」
人の気配を感じられないその雰囲気に、私は無駄に声を出して気を紛らせながら歩み出す。
しかし…歩き辛い…。
役員フロアーなのはいいけど、本当にこの厚みの絨毯必要なの??
明日からヒール太めにしよう…。
私はピンヒールにひっかかる絨毯に足を取られつつ、そんな事を思いながら秘書室を探した。
そして、数ある会議室を過ぎ次に見えた角を曲がろうとした時だった。
ついに完全に絨毯に足を取らた私はそのまま転倒しかかってしまう。
「っわっ!」
しかし次の瞬間…
“バサッ”
私はしりもちを着く代わりに、おもむろに後ろから抱上げられた。そしてそのまま一瞬のうちにして誰かの腕の中に収まった。
「…you all right my sweet?」
刹那、頭上から降り注ぐ甘く妖艶な声。
その温もりとムスクの薫りに私は思わずクラリとする…。
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