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“はいぃ!?”
深くを問うなと言われても、“はい。そーですか”と、引き受けられるような問題では到底ありませんよ……
私は驚きと共にそう思うと、ローレンツ様に噛み付くように言葉を連ねた。
「いや……ちょっと待って下さい。それはあまりにも一方的過ぎます!だいたい何で私なんですか?私、ボディーガードの経験なんて無いですよ!?第一、副社長には既に屈強な方々が常に付いているではないですか!そこに何で私なんです!?私みたいな素人が副社長の御側に付いたところで、彼等の足元にも及びませんよ!?」
私がボディーガード!?
そんなの…冗談じゃない!
なんだか自分で口にしていてだんだん馬鹿らしくなってきていた。
だからかどんどんと発言もエスカレートしていく。
「しかも、何の背景も知らされずにただ御身を御守りするだなんて…あまりにも無防で、お引き受けしたところで副社長を御守りきれる自信なんか持てません!……どういう経緯で、私にこのような特殊な任務を命じられたかは存じませんが、そのようなお話しなら私はお引き受け致しかねます。」
そして私は遂にそうキッパリと断ると、二人に向かい頭を下げ、若干清々しい気分を持ちつつ部屋を後にしようと体の向きを変えた。
「それで……」
しかし、そんな私の後ろ姿にローレンツ様の凛とした声が響いた。
「それで貴女はどちらに?」
“…えッ!?”
その言葉に私は釣られるように振り返る。
「“副社長直々の任”に背き、貴女に向かう場所など…?」
するとそこには、余裕の表情で私を迎えるローレンツ様の姿があった。
“……確かに……”
そして私はその一言に、突きつけられた現実を覚ると、謀らずも背筋に冷たいものを一筋走らせた。
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