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「ローレンツ…そこまで畳み掛けるな……」
私の周りの凍った空気を、副社長はそんな一言で溶くと、再び私に向き直り、甘く…けれど的を射ぬくかのように続けた。
「時に…Miss.相原…。私は貴方を側に置きたい。」
「えっ…!?」
そのストレートな言葉に、私は驚きとともに戸惑いの言葉を漏らす。
「どうすれば私の側に?」
「………」
“どーすれば”って…。
そんな事言われても、ボディーガードなんてしたこともないし、今までもこれからもそれを生業にするなんてこれっぽっちも考えたこともなかった…。
だから急に、何をどうと言われても…。
副社長の甘い言葉に二の句を奪われた私は、そんな事を思いながら俯いて赤らんだ顔を隠した。
「1年……いや、数ヶ月で構わない。この任を引き受けてくれるのなら、その後の望みをなんでも叶えよう。物でも、地位でも、やりたい事でも…」
「えっ!?」
思わず項垂れた首が上がった。
やりたいことって…
それって営企に戻れるってこと!?
数ヶ月の間だけ、副社長の側でボディーガードをすれば、また私は営企に戻れるの!?
私の口から今度は、驚きと共に歓喜に満ちた言葉が漏れた。
「確か…貴女は任されていたプロジェクトがあったはず。Mr.Jの仰るとおり任に付けば、そのプロジェクトに…いや、貴女が率いるプロジェクトを立ち上げる手筈を調えよう…」
そんな私の反応を見逃すことなく、勘所を付くように更にローレンツ様がそう畳み掛ける。
「そ、それって…私が……プロジェクトリーダー…?私の……私のプロジェクトを…?」
ゆっくりと頷くローレンツ様を目に、私は不覚にも気持ちがぐらつきだしていた。
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