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「っそれは…」
「ローレンツ…」
私の申し出に透かさずローレンツ様が否認の声を上げようと口を開いた。
しかし、そんなローレンツ様を黙らせるかのように副社長は片手を上げると、彼から言葉を奪い、ゆっくりと私に向き直った。
「Miss.相原…いいだろう。これから身を預ける間柄としても、貴女を信頼しお話ししよう…」
そして、私の申し出にそう承諾すると、副社長は隠されたその真相を語り始めた。
「私の国はヨーロッパに属する小国なのだが……そこに身を置く父が先日、病に倒れた……」
“えっ!?お父様が病い…!?”
口火を切る幸先の悪いエピソードに、顔を強張らせながら私は続きに耳を傾ける。
「すると、これを機にとばかりに、父の地位を狙う者達が色々と騒ぎを起こし始めた……。そして、その者達の手が私の処にまで及ぼうとしている…」
「お…お父様の地位を狙った騒ぎ!?」
副社長の話しに思わず大きな声が出た。
ある程度の事は想像していたけれど、実際に耳にしてしまうと驚きが隠せなかった。
ん~……。
でも、どうしてお父様の地位を狙う人達が副社長にまで危害を……?
「…それほどにまでして手にしたい地位ってこと…?大企業の会長とか…?」
そして私はその話しについて色々と推測するあまり、思わず独り言のような呟きを漏らしてしまった。
「なにか…思い違いをしてはいないか…」
するとそんな呟きを耳にしたローレンツ様が、凛とした声で私の思考を妨げた。
「Miss.相原…。Mr.Jの置かれている立場は貴女の考えているようなものではない…」
「えっ?」
ローレンツ様の一段と引き締まった声が私の疑問符を導く。
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