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「何故、自分が選ばれたのか……」 “ドキッ!” その言葉に私はドキリと心臓を跳ね上げると、ローレンツ様を見上げる。 すると、ローレンツ様は怪しげな笑みを浮かべながらこう続けた。 「一流大卒の黒帯有段者であることは、貴女が教えてくれた事なのだが?」 “!!!???” 寝耳に水状態の私に、勝ち誇った顔付きでローレンツ様はとどめの一言をさす。 「誰が周りにいるかも分からぬ会議室前で、堂々と自分のプロフィールを述べるのは、あまり感心はしないがね…」 「っなっ!!!!」 そのめちゃくちゃ身に覚えがある話しに、私は耳の端まで真っ赤にすると、言葉にならない声を上げた。 なに、この人…!? どこで聞いてたのよぉ~っ! さながら忍者のようなんだけど…… その成り、まさか偽りなんじゃないでしょうねぇ~? 怖い…… 怖い~っ! どこまで私のことを知ってるのよ~っ!? そんなことを考えていたら今度はどんどんと青ざめていく感覚がした。 するとそんな私達のやり取りに肩を揺らしながら笑って見ていたMr.Jが、ついに私に忠告をする。 「まぁ、ローレンツがそこにいたのも何かの縁だ。そろそろ諦めてサインするがいい。あいつを敵に回すと後が怖いぞ…」 “後が怖い……” その想像もし難いがたい状態に、私は悪寒を走らせると、しぶしぶ約款の続きに目をやった。 “!!!” しかし次の瞬間、私の悲鳴にも近い叫び声が轟くのであった。 「もぉ~っ!だからなんなのっ!?これぇ~っ!」 “第6項…乙は甲の寝所で一夜を明かしてはならない”
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