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あれから、あれよあれよと言う間に事は進み、その日のうちにこの一等地にそびえ立つペントハウスに連れてこられた私。 その家の広さたるや部屋の数も分からないほど。 使用人の数も厳選されたメンバーだとは聞いたけれども、未だに初めまして?と思う人が後をたたない。 そして私の為にと用意されてたお世話係の数には軽く引く程で、これでもなんとか頼み込んで年の近い田所さんとベテランのアンジェラさんだけにしてもらった位だった。 とにかく、1日にして180度変わってしまった私の生活…。 そしてその非日常の極みが、あの方だ。 私の向かいに座られているMr.J… この生活が始まって顔を会わさないのは、通勤時と、個室を伴う場面と、眠る時位だけ…。 ねぇ…“美人は3日で飽きる”んじゃなかったけ?? 未だにちっとも見慣れないその妖艶な成り…… 慣れない… 本っっ当に慣れない! これが一番慣れなぁ~~い!! 本当にこんな生活を後数ヵ月も続けていかなくてはいけないのかと思うと、軽く目眩を覚える今日この頃だった。 「櫻さまもそろそろお出掛けのご準備を…」 “!?” 悶々と物思いにふけっている私に、そっとそう声をかけてくれた田所さん。 その一言にハッとし向かいを見ると、既にその席はもぬけの殻になっていた。 その事実に驚くと、私もいそいそと席を立つ。
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