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ほどなくMr.Jをお出迎えする末尾になんとか滑り込むと、私も周りに倣い深く頭をさげた。
「相原さん…コート位はお脱ぎなさい。」
そんな私に、頭を下げたまま吉井チーフはそう忠告する。
私はその一言に、慌ててコートを脱ぐと足元にコートと鞄を隠し、再び深く頭を下げた。
それから間なしに、Mr.Jとローレンツ様が車から降りてこられた。
私はお二人の足元で、自分の前方を通過したことを確認すると、ゆっくりと直り、そして吉井チーフの後について歩き出す。
そしてエレベーターホールまでその一団のお供をすると、待機していたエレベーターにいち早く乗り込み、Mr.Jとローレンツ様、そして吉井チーフと順に乗り込んだ事を確認し、その扉を閉めた。
静まり返ったエレベーターの中、一連の流れが終わり、私はホッと小さな溜め息をつく。
そんな中、チラリと私の手荷物を確認したローレンツ様は問いかけてきた。
「それは…間に合ったのか?」
“うっ……”
なんとも痛い所をついてくるローレンツ様。
私はその問に顔をしかめつつ、返す言葉を失う。
するとそんな私の代わりに、Mr.Jはクスクスと笑いながら口を開いた。
「何を分かりきったことを…お前も人が悪な…。女と言うものは愛でるものだ。追い詰めるのは寝所だけにしろ…」
“ボッ!!”
その発言に顔から火を吹き出す私。
「お見苦しい所をお見せ致しました。相原には二度とこのような事が無きよう、指導致します。」
一方、吉井チーフはそんな中でも何事もなかったかのようにそうサラリと返した。
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