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「櫻さんって…ほんっっとに、工藤先輩から愛されてますよね~♪っていうかラブラブ~っていうか、工藤先輩がお熱~ウフフ~♪」 はぁ~…。 全くこの娘は…。 「なに馬鹿なこと言ってんのよ!前から言ってるけど私達はそんな関係でもないし、私も工藤もそう言う目で見てないから。」 工藤が来ると、決まってこの話題を持ち出す汐莉。 私は付き合いきれない思いでPCに向き直ると、さらっといつもの返しをした。 「でもでも~、櫻さんはそう思っていたとしても、工藤先輩が同じように思っているかどうかは分からないじゃないでかぁ~。工藤先輩に確認したんですかぁ?そこのところっ♪」 工藤に確認…。 そのセリフで思わずキーボードを打つ手が止まる。 「あのねぇ…。そんなもん、確認するわけないじゃない。というか、確認するまででもないし。」 しかし、私は再び手を動かすと、汐莉に向き合うでもなくそう続けた。 「ってことは、まだ工藤先輩は櫻さんに気持ちを伝えていないんですね~♪」 「っなっ…!!」 その台詞に思わず大きな声が出て、慌てて周りを見渡す。 すると、こちらを見つめる数人と目が合い恥ずかしさのあまり身を縮めてパーテーションの影に隠れた。 そしてチラリと、満面な汐莉の笑顔を見て、また小さくため息をつくと、背筋を伸ばしPCに向き合った。 「……駄弁が過ぎるわよ。仕事にもどりなさい。」 そして、何事もなかったかのように落ち着いた声で汐莉をそう一喝する。 「はぁ~い…」 すると、汐莉も観念したのか情けない声で返事をすると、しぶしぶとデスクに向き直った。 本当に汐莉には困ったものだ…。 工藤が来る度、工藤先輩。工藤先輩って…。 第一何で私が“さん付け”で工藤は“先輩”なのよ!? アナタの先輩は私でしょ~がぁ~! そんなことを考えていたら、ついついキーボードを打つ手に力がこもった。
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