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「おめでとう…相原君…栄転だよ。」
「えい…てん…?」
課長の発言に耳を疑い、思わず子供のように言葉を繰り返す。
「そう。栄転…。君に人事異動の辞令が出たんだよ。」
「はいぃ~~!!??」
その思ってもみない言葉に私は課長の前だと言うことも忘れ、声を轟かせた。
“ダンッ!”
「い、異動って、課長!本当ですか!?本当に私なんですか?なんで、こんな時期に…って、なんで私なんですか!?私、何かやらかしましたか!?」
あまりの驚愕に、私は思わず課長のデスクまで駆け寄ると、それに手を付き、矢継ぎ早に問いかける。
「ちょ…ちょっと相原君。落ち着きたまえ。僕だって優秀な人材を失いたくはないんだ。」
「課長…だったらなんで…」
衝撃に感情が定まらず、私は今にも泣き出しそうになりながら必死に課長にくらいつく。
「私…。私、本当に努力してきたつもりです。実際にそれなりに…成果も出してきたと自負しております。課長もそれをかってくださったからこそ、プロジェクトにも…」
これまで努力と根性で積み上げてきたものが、一気に失われていく感覚がした。
だから、悔しくて悲しくて話していて言葉が詰まる……
「いやです!…課長…私、異動なんていやです!営企でやっていきたいんです!営企でもっともっと結果を残していきたいんです!今、このプロジェクトから離れる訳にはいきません!」
もう半狂乱になりつつ私は必至で食い下がった。
でも…
「君の気持ちも分かるが、これはもう、決定事項だ。先ほど部長が直々に通知をもっていらしたよ。…まぁ、君なら新しい部署でも結果を残せるよ…」
「そんな…」
いくら結果を残せるからって、他じゃ意味がない…。私はここで、この営業企画部で結果を残したい…。いつか自分の企画したプロジェクトでチームを組んで……。
私はうつ向いた顔を上げられずにいた。
そして、いつ受け取ったのかも覚えてはいない異動発令書を手に、しずしずと課長の部屋を後にした。
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