「ハイライト」

24/26
前へ
/26ページ
次へ
「ライター貸してくれませんか? 忘れちゃって」  声をかけられて、顔を上げると。そこに立っていたのは彼だった。  ケースの中に突っ込んだライターを取り出すだけなのに、スムーズにいかない。  どうぞ、と渡す指が震えないよう、必死で力を込める。お釣りや商品を渡す時には絶対にこんなことはないのに。 「……あっ」  彼は俺の顔をじっと見て、少し考えてから、 「コンビニの人だよね? どっかで見たことある顔だなって思ってて」 「そうです」 「やっぱりそうだった。人違いじゃなくてよかったー。いつもレジ打って貰ってるから、なんか知り合いみたいに顔と名前覚えてた」  彼はニッと口を歪めて笑った。こんな表情、初めて見た。ただ買い物してるだけのやり取りじゃ見れなかった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加